現場業務の理解から導く、月4,000時間の業務削減。「GiGO NAVI」で変わるアミューズメント施設運営
国内外に600店舗を構えるアミューズメント施設「GiGO」。そこで働く数千人のスタッフの業務を支えているのが、運営のGENDAが自社開発する業務支援ツール「GiGO NAVI」です。今回は、プロダクトマネージャーの原田さんとUI/UXデザイナーのponyさんに、プロダクトづくりの裏側を伺いました。

pony|株式会社GENDA Customer Experience室 UI/UXデザイナー
広告システム関連のIT企業に新卒でエンジニアとして入社後、新規事業部にて複数のオタク系事業の立ち上げに参画。広告代理店セプテーニやSO Technologiesでデザイナーを経験し、2023年12月に株式会社GENDAへ入社。現在はGiGO NAVIのUI/UXデザインを担当。
原田ゆかり|株式会社GENDA Customer Experience室 プロダクトマネージャー
新卒でフードデリバリー系の事業会社に営業職として入社。その後オンライン英会話サービスや物流系スタートアップにて事業開発やサービス/プロダクト企画を担当。2023年12月にGENDAに入社し、プロダクトマネージャーとして「GiGO NAVI」の開発に携わる。
アミューズメント施設の業務を支える「GiGO NAVI」
── まずはじめにGENDAについて、そしてその中で「GiGO NAVI」がどのような役割を担っているのかについて、教えてください。
原田:GENDAは「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(大志)を掲げ、国内外でエンターテイメント領域において幅広く事業を展開しています。今回お話しする「GiGO NAVI」は、GENDAのグループ企業である株式会社GENDA GiGO Entertainmentが運営するアミューズメント施設「GiGO」で、店舗スタッフが使う業務支援ツールです。

原田:アミューズメント施設である「GiGO」では、クレーンゲームの中の景品(プライズ)の管理や棚卸しなど、いわゆるバックヤード業務がたくさんあります。店舗スタッフは日々その業務に追われており、業務負荷の改善が課題となっていました。「GiGO NAVI」は、そういった店舗業務を効率的かつ生産的に行えるよう支援しています。
pony: 「GiGO NAVI」の主な機能には、景品の在庫管理、配置や稼働状況の記録、棚卸し支援、店舗全体の売上管理などがあります。ただ、機能の多寡よりも業務全体での利用体験として、業務負荷を減らすことに価値があると考えています。店舗スタッフが迷わず動けることを最優先に考えて設計しています。
紙やExcelでの運営から脱却するために
── 「GiGO NAVI」導入前の現場は、どのように運営されていたのでしょうか?
原田:GiGOのお店の売上の大部分を占めるのは、クレーンゲームです。その景品に関する業務は日々の業務の大きな割合を占め、長年管理の手段として紙やExcelを利用していました。Excel入力のためにはPCが必要で、その使用権限を持つ幹部以上の方でないと完結できません。フロアで紙にメモしたものをバックヤードに戻ってPCで入力するといった手間もあり、効率化・平準化が課題となっていました。

── 「GiGO NAVI」に置き換えていくにあたって、もともとの業務マニュアルは参照されましたか?
pony:一定の業務マニュアルはありましたが、現場が実際に困っていることは何なのかを知る必要がありました。そのため、本部の意向だけでなく、開発を担当する私たち自身がアルバイト体験や現場の視察をして困りごとを把握したうえで、それらを最適なオペレーションへと整理し、「GiGO NAVI」に落とし込んでいきました。
目指したのは、「誰でも同じ品質で、安全に無駄なく業務を進められること」です。たとえば、ベテランスタッフの経験に基づく工夫は現場の強みである一方、店舗ごとに手順が分かれると品質のばらつきにつながることがあります。「GiGO NAVI」では標準化を重視し、新しく着任された方やスキルに自信がない方でも迷わず同じ品質で業務を遂行できるよう意識しました。
── 現場スタッフのペルソナは、どのように整理しましたか?
pony:機能によってメインのペルソナを変えています。店長が使う機能、アルバイトスタッフが使う機能、景品の売上向上を担うフロアマネージャーが使う機能と、機能によって使用する役職が異なるからです。
最初に取り組んだ景品関係の機能作成では、担当となるフロアマネージャーを最優先のペルソナとしました。彼らはどのような年齢層で、毎日どんな業務をしていて、ITツールにどの程度馴染んでいるか……といった細かいペルソナを定めました。

── 同じ職種でも、店舗の立地によって違いはありますか?
pony:機能を作成していく過程で、都内と郊外、大型店舗と小型店舗など、店舗の属性の違いによって業務に差があるか調査をしました。結果として大きな差は見られず、都内の大型店舗で生じる不満は、全店舗で同様に発生することに帰着しました。現在は、お客様の多い店舗のユースケースを軸としながら意思決定を行っています。
アルバイトを通じ、五感で理解する現場業務
── 先ほど、店舗でアルバイト体験をしているという話がありました。アルバイトを通じて、どのような気づきがありましたか?
pony:開発に関わる社員メンバーは必ずアルバイト体験を行っています。私はフロアマネージャーの仕事について知るために、そのポジションで3日間参加しました。「GiGO NAVI」の入力・確認業務だけでなく、朝会への参加、接客、ブースのディスプレイ調整など、一通りの業務を体験しました。
アルバイト体験では、さまざまな気づきがありました。たとえば、学校帰りの方や仕事帰りの方が増える夕方以降は接客に集中する必要があるため、早朝にどれだけ準備できるかの勝負であるということ。景品が減ったブースは、夕方にフロアマネージャーが「GiGO NAVI」の数値を見ながら補充の判断をしており、現場のスピード感も実感しました。
また、店長とフロアマネージャーとの定例会議に同席して驚いたのが、地域のイベントや天気、客層の変化を読み取りながら、景品の配置を決めていたことです。「今日は雨だから〇〇ではなく✕✕にしよう」「最も見られる路面にはこの景品を置こう」など、日々多くの判断が求められる仕事であることを実感し、現場での判断に適した設計にしようと意識が変わりました。
デバイスについても、当初はバックヤードでPCで入力する形を想定していましたが、実際に現場に立つと、フロアでスマホで入力できる方が断然良いなと身をもって感じました。
── 原田さんは、どのような現場業務を経験されましたか?
原田:私も年に数回、数日間の店舗勤務をしています。その期間は朝から晩まで、トイレ掃除からお客様の接客まで、現場の方とまったく同じ仕事に取り組みます。
大きな収穫は、「GiGO NAVI」の各機能が1日の流れの中のどのタイミングでどれぐらいの時間かかって使われているのか、そして「GiGO NAVI」を使っていない時間はどう過ごしているのかを立体的に把握できたことです。実際の作業はさまざまな要因で中断しながら進むことや、景品の重さや足腰の痛さなどの五感まで含めて、業務の理解度が上がりました。来週からは年末年始の繁忙期なので *、店舗にヘルプに行きます。
* 本取材は2025年12月に行いました。

pony:デザイナーやエンジニアも、年に数回は店舗ヘルプや業務体験に行きます。時期によって雰囲気も客層も違いますし、時間が経つとオペレーションが変わっていたり、店舗が違うと同じレイヤーのスタッフでも別のことをやっていたりします。「この店舗では、この時間にこの役職の人がこの業務をやっていたけど、別の店舗はこうだった」という生の情報は、仕様やデザインを考えるうえで役立っています。
原田:最終的には統一された仕様を提供するので、各々が現場から持ち帰った一次情報を機能にどう落とし込むか、毎回議論しています。機能の追加を検討する際も、「こういった機能があると救われる現場も多い」と認識したうえで、統一したオペレーションとしてバランスを保てるように慎重に判断しています。
pony:新機能としてリリースする前にも、実際にスタッフに操作してもらうベータテストを複数の店舗で実施しています。想定通りに操作できるか、完了までの時間はどうかなどをチェックし、現場の感覚を把握したうえで、リリース前のチェックをしています。そこでの発見も、機能改善を行う際の参考にしています。

「GiGO NAVI」での完結より、ユースケースの統一を優先
── さまざまな形で現場の実態や声に触れながらつくられているのですね。実際に、それらを踏まえて改善した例を教えてください。
pony:一例として、フロアマップ機能をご紹介します。「GiGO NAVI」では、当初フロアマップをスマホで閲覧しながら作業することを想定していました。しかし実際に現場へヒアリングを行うと、マップを紙に印刷して使った方が業務を進めやすいという声が、複数の店舗から挙がりました。
特に、ショッピングモールのワンフロアを占めるような郊外の大型店舗では、スマホ画面ではマップが小さく表示されて見にくく、A3サイズで1枚に印刷したいという要望が多くありました。また、1日に朝と夕方など複数回ブースの入れ替えを行うため、フロアマップと実際の現場を見比べながら作業する必要があることや、複数人で作業する際に、マップ上で担当範囲を区切って使いたいといったニーズも明らかになりました。
これらの要望を踏まえ、印刷して使うことを前提とした運用へと見直しを行いました。「GiGO NAVI」上でA4・A3の印刷サイズを指定できるようにし、印刷のたびに表示範囲が変わらないよう、印刷範囲を保存できる仕様としています。誰が印刷しても店舗内で印刷後のマップに差が出ず、印刷方法に迷うことなく利用できるようにすることを意識して進めていきました。

── 新しい機能を追加する際にも、ユースケースをしっかりと考慮し、現場に提示していくことが必要そうですね。
pony:そうですね。機能を増やせば便利になる、というわけではありません。複雑になるほど、「どちらの機能を使えばいいかわからない」と迷わせてしまったり、「うちの店舗には合わないからこの機能は使わなくていい」と店舗ごとに差が生まれる原因にもなりかねません。ユースケースを明確にしたうえで、必要な機能の優先順位やUIを決めるようにしています。
── アミューズメント施設特有の環境や働き方を考慮した点はありますか。
pony:入出庫や棚卸しなど、店舗内の実作業をしながら「GiGO NAVI」を操作する場面も多いです。そのため、店舗スタッフが操作に迷うことがないように、統一感あるデザインにするためのガイドラインをつくりました。画面構成のパターンを統一するのはもちろん、重要な数字を太字にする、意味のない色は使わないなどのルールを定めています。「GiGO NAVI」のロゴは本来は赤と青ですが、赤は警告やエラーの表示のみに使う色としているため、管理画面上のロゴは白抜きにしました。
フロアマップはどうしても色数が多くなりがちなので、特に考慮してつくっています。各ブースの色分けにおいても、モノクロで印刷されることを想定してコントラストに留意しており、実際に店舗のプリンターで印刷して検証もしました。大型店舗だと印刷した際に文字が小さくなりがちなので、そのあたりも考慮しています。

成果と評価を得て、店舗DXを牽引する基盤へ
── 具体的に見えてきている成果や、今後の展望を教えてください。
原田:Excelからのリプレイスが進み、業務ツールとしてのポジションを確立してきました。定期的に取っている店舗スタッフへのアンケートでも、8割以上の方に「使いやすい」「業務の効率化に貢献している」と嬉しい評価をいただいています。あらゆる役職の方に使っていただけるものになってきたことで、欲しい機能の要望や景品関連以外の業務領域での相談も増えてきています。
実際の成果としても、月4,000時間の業務時間削減という数値が出ています。景品関連の管理機能のアウトカムとして2024年に検証したものなので、他の機能も含めて現在は更なる効果改善が見込まれます。これまで一部のスタッフがバックヤードに戻ってやるしかなかった業務が、「GiGO NAVI」によってフロアでアルバイトの方でも対応できるようになり、業務の効率化・平準化の改善、そして作業時間の大幅削減につながったと考えています。
原田:今後は業務を支える基盤としての期待に応えつつ、こちらからできることをどんどん提案していきたいですね。「GiGO NAVI」上でデータを見て判断する場面で、サジェストを出したり、自動で対応できるようにするなど、店舗の運営をよりデータやテクノロジーで強力バックアップするような存在を目指していきたいです。
pony:同じGENDAの「カラオケBanBan」でも、業務支援ツール「BanBan NAVI」が2025年に運用開始されました。「GiGO NAVI」と近い目的を持った業務支援ツールで、「GiGO NAVI」の成果があったからこそはじまった取り組みだと考えています。開発は別チームが行っていますが、常に事例や知見の共有を行っており、今後は相乗効果も生まれてくるでしょう。
さらに今後は、GENDAの他のブランドでもどんどん店舗DXツールが展開されていくと思うので、「GiGO NAVI」はその先駆けとして良い事例をつくっていきたいです。幅広い事業を展開しているからこそ、グループ内で業務支援ツール同士で良い影響を与えあっていければと思います。
取材協力
アミューズメント施設「GiGO」 https://tempo.gendagigo.jp/
株式会社GENDA 企業サイト https://genda.jp/




