デザインに遊び心を取り入れるための6つの質問

本記事は北欧のデザインメディア DeMagSign の翻訳記事です。

元記事はこちら:https://demagsign.io/a-guide-to-playfulness/

Geo Law氏は、デザインに遊び心を上手に取り入れているイラストレーターです。この記事では、彼がどのようにデザインを楽しく明るいものにしているのかを紹介します。

Geoは、イギリスの工業都市シェフィールド出身のイラストレーターです。現在はロンドンのダルストンにあるクリエイティブなコワーキングスペース、ミラーズ ジャンクションに住み、フリーランスとして活動しています。

彼は、マンガやゲームのキャラクター、ポップカルチャーなどのさまざまなメディアを素材として、落書きをベースとした多様な作品を描いています。また、彼はさまざまなブランドや企業と一緒に仕事をし、チームや人々、組織の核となる部分に命を吹きこんできました。

彼のデザインはたいてい場合、愛用しているペンを使った落書きから始まります。もうすこしだけ紹介しておくと、彼はデジタルの作品も、版画も、さらには壁画によるインテリアの装飾まで幅広い制作物を手がけています。彼の興味は幅広く、ビジュアルカルチャー、アート、音楽、映画、本、コーヒーを飲むこと、サッカーまで多岐に渡ります。

Geo Law氏(出典:Geo)

1. 複雑性に満ちた世界の中で、デザイナーが正気を保ちながらもデザインにほんのすこし遊び心を取りいれていくにはどうしたらよいのでしょうか?

クリエイターは常に面白いことに挑戦しようとするものだと思います。問題の解決の方法に制限がない場合、問題の解決には遊び心とひらめきがモノをいいます。例えば、私はふだんから街中の写真をスマホに撮りためてその写真に落書きしたり、道行く人のファッションを眺めて簡単なメモとスケッチを作り、私の目でみた世界と登場人物のミニチュア版を作り上げてみたりします。いろんな媒体を使えるときには、いつでも遊び方をみつけるようにしているのです。

遊びはクリエイターにとってもっとも本能的なものであり、紙にランダムな4本の線を引いてそこに少し手を加えて、新しいものを生み出すシンプルな遊びのようなものです。

私はよく、子どもたちの遊び方を観察します。深く考え過ぎずに線を引き、色を塗り、自由に紙を汚している様子は本能的ですし、この行動は、冒険とか、ペンをひたすら自由に走らせるような直感的な行動とリンクしているものがあります。違う見方をすれば、ちょっと気楽に、かつ思いっきりなにかのキャンバスに自分のエネルギーをぶつけることができれば、自分の正常な精神状態を保つのに役立つともいえます。

2. 遊び心と健全なエモーショナルIQをもつことはどんな意味を持つのでしょうか?また、あなたはどのように実践しているのですか?

私のこれまでの人生は、遊び心にあふれた生活でした。ありがたいことに、子供のころはおもちゃやビデオゲームを与えられ、8ビットや16ビットで構成されたビデオゲームの話題で友達と盛り上がっていました。ピクセル化された世界にのめりこんで、自分の想像力を上手く働かせることができました。お絵描きや落書きで自分や他人を笑顔にできたら最高ですし、私はいつでも身の回りにそんなチャンスを探しています。

エモーショナルIQは、経験を生かして他者と洞察を共有し、自己愛、開放性、共感性を実践し、他者とつながる手段としてアートやデザインを活用すときに心に留めておくべきものです。人間の経験は愛であり、それはさまざまな側面から経験することができます。

また、フリーランスのクリエイターとして、ビジネスだけでなく自分自身のことも考え、期待や感情をコントロールしなければならないことに気づかされます。わくわくする仕事を確保し、その仕事の請求書をみると気分が昂りますが、マイナス面を理解し、それにたいしてどのように反応するかが重要なのです。

3. イラストレーターとして、デザインを通してどんなメッセージを伝えたいですか? また、どんなものからインスピレーションを得ているのでしょうか?

私はいまでもスケッチブックとノートを使って紙に絵を描く練習をしていますし、スタジオでは壁画の練習のために大判の紙に落書きしています。ペイント用のペンで大きな絵を描くことが大好きなのです。

デジタルの作品は、いまはiPad Proだけを使って作っています。時間を節約できますし、綺麗に引きたい線のクオリティを保てるからです。だいたいはYouTubeで他のアーティストの動画をみて勉強していますが、時にはSkillshareも使っています。私の作業工程はほかの人からみるとちょっと乱雑にみえるかもしれませんが、私にはあっています。自分にとって自然に思われるやり方が1番です。もし誰かがよりよい方法を共有してくれたら、それはそれで喜ばしいことです!

4. クリエイターとして仕事を始めたばかり、あるいはなにか新しいことを身につけて自分のクリエイティブの幅を広げたいと思っているデザイナーやイラストレーターにお勧めできるコツやツールはありますか?

いつでも紙とペンに立ち返り完璧な絵を描こうという考えを捨てること、そして心と手先をリラックスさせて、馬鹿馬鹿しい絵や抽象的な絵を描いて遊びましょう。なにか美しいものを作らなければならないというプレッシャーをかけずになにかを作ろうとすることは難しいのですが、ある種のセラピーのようなものとして私はこれは必要なプロセスだと考えています。

美しいものを作り出すというのは主観的なことですが、同時にそれを成し遂げるだけのスキルを磨く時間も必要になります。だからこそ、いつでもプロセスを楽しみ、ある種のチャレンジを楽しまなければなりません。私自身は、絵を描く道具を変えることから、デジタルアートの描き方を変えることまで、さまざまな試みをしています。

(出典:Pexels)

5. 私たちが掲げる「ほんの少し自分を変える」というテーマに対して、今年注力しようとしているテーマはありますか? あなたがそれが重要だと考えている理由を教えてください。

今年は、リフレッシュとリチャージに力を注ぎたいと思っています。「ほんの少し自分を変える」必要性を感じたときには、リフレッシュとチャージをすることが自然なのです。ときにはその手段がスナックやコーヒーだったりもするわけですが、理由はなんでもよくて、ただリフレッシュするためにいまやっていることを一旦止めるのです。

ループにはまってしまって、なかなか解決策がみえないときは、とくにやめるべきです。私たちクリエイターは自分の仕事と自分自身について考えや思いを巡らせ続けるプロセスと向き合わなければならないことが多いです。だからこそ、タスクから離れて、頭の中をぐるぐる回っていることを一度忘れることが重要なのです。

ランチ休憩は最適で、自分のデスクではなくどこかに出かけてランチを食べれたら、最高です。科学的な根拠はよく分かりませんが、これはいつだって効果的な方法なのです!

あるとき、私は進行中の商業的なプロジェクトが行き詰まったり、待ちぼうけを食らったりしているあいだに、個人的なプロジェクトに取り組んだことがあります。スケッチブックに数分間落書きをしていると、仕事の妨げになるものが緩和されるようで、目の前の仕事に戻るまえに、心を休められたように思います。

(出典:Pexels)

6. コンセプトをまとめるためには絵を描くことが役立ちます。なにかをスケッチするという行為は何百年も行われてきたわけですが、イラストレーションを生業としない人たちにとっても落書きや絵を描くことが重要だとおっしゃるのはどうしてですか?

1枚の絵は千の言葉に匹敵するとか、複雑な情報をシンプルにシェアするには絵が最適だとか、よくいわれます。私たちは文字や口頭での説明を省略するために、フローチャートや図形、ちょっとした地図を描いたりすることがあります。一方で、子どもの頃、絵の具などの道具を持って好きな絵を描いていたときはほとんど本能的にそうしていたように思えます、また大人でもプロのクリエイターではないのに封筒の隅に落書きしたり塗り絵の本を使って、手先を動かす機会をエネルギーの発散の場にしている人もいます。

落書きはクリエイティブな精神のための訓練や手先の訓練の一種だと思われることがあります。なぜそう思われるのか、それが重要なことなのかどうかも分かりません。しかし、これは私たちの精神の働きの1つであって、そもそも私たちは目的をもってそれをするか否かに関わらず、抽象的なアイデアを紙の上に描きだすことが好きだということの表れだと信じています。落書きをするという行為自体が、なんらかの表現のように思われます。

スケッチに関していえば、私たちは種として文章にすることと記録に残すことが好きで、スケッチも記憶装置の延長なのだと思います。自分の頭から出たことを記録したものをみると、いつだって思ったものとは違ってみえますが、自分のその時の感情を思い起こさせてくれるのです。

私にとって絵を描くということはほっとすることであり、ストレスのかかることでもあり、楽しいことでもあり、未知の体験でもあります。なぜなら私は研鑽と発見の道に深くはいりこんでいて、いつでも、自分さえ驚くようななにかを次は描けるのではないかと期待しているのです。それは、自分の作品に使えるものかもしれませんし、なにかのほかの疑問に答えられるものかもしれません。はたまた、もっと疑問を呼んでしまうものかもしれません。

こういうことがあるからこそ、私はイラスト業界の人であろうがそうでなかろうが、絵を描くという行為に身を任せることが大事なのではないかと考えているのです。

落書きの学習における重要性を説明した、Brock Universityの教授であるGiulia Forsytheによる落書き(出典:Giulia Forsythe)

(カバー写真:「We Got This」(出典:Geo Law)

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