失敗と向き合う。前進するための3つのステップ
Designing Well / ウェルビーイングをデザインする #4

どんなに気をつけていても、失敗は起こります。失敗について書物やTED Talksなどで語ることは一般的なものとなり、私たちは失敗についてオープンに話せるようになってきていると感じます。とはいえ、まだまだ「成功者による成功へのプロセスとしての失敗談」が多くを占めているようにも感じます。もっといろいろな種類の失敗の話をしてもいいのかもしれません。
私も最近、失敗をしました。私はNestoというスタートアップを運営していますが、事業が期待していたような成長を見せず、スタートアップとして失敗したことを受け入れたのです。
私たちは失敗しないように最善を尽くしています。失敗の確率を減らすため、さまざまな手段を試すべきです。しかし、残念ながら失敗は避けられないものです。もしあなたが失敗したときに少しでもなにかの参考になればと思い、私の失敗の経験や受け入れ方のプロセスをお話します。また、将来きっと失敗を体験するであろう自分への備忘録でもあります。
失敗と向き合う3つのステップ
ステップ1:失敗を受け入れる
失敗を失敗と認めること。これは簡単なようでとても難しいことです。ついつい蓋をして逃げたくなったり、言い訳をしたくなったりします。もし言い訳したいことがあるなら、やり残したことがあるということかもしれません。まずは心残りがあるならやり切ることをおすすめします。自分は最善を尽くしたと思えると、状況を受け入れやすくなります。
失敗とは、自分自身や周りの期待に答えられなかったことを意味します。期待は数字目標のように明文化されているものもあれば、抽象的なものもあります。私たちの場合も、具体的な数字としての成長目標もあれば、特に投資家などから社会的なインパクトを残して欲しいといった期待も感じていました。
私の場合、失敗と向き合うために必要だった問いは以下の3つだったように思います。
- どのような期待があったのか
 - 期待に応えるための手段は他にあるか
 - 続けることにワクワクできるか
 
私たちはチームで話し合うプロセスの中でこういった問いを自問していましたが、コーチングやカウンセリングを活用するのも効果的な手段だと思います。
ステップ2:失敗を活かす方法を考える
失敗を認めて諦め新しいチャレンジをはじめる、次に同じことが起こらないように学びを留める、失敗を別の形のアイデアに変える。失敗のあとに続くアクションは多様です。ありきたりな表現かもしれませんが、失敗は新しい気づきや成長につながる良い機会でもあります。
私たちのサービスは目標としていた規模に事業を拡大させることができませんでした。拡大を前提としたスタートアップとしては失敗です。ここで事業は閉じて、学びを別の場所で活かすということもできるでしょう。サービスをピボットさせることもできます。スタートアップではない形でサービスを継続する道を選ぶこともできます。現在進行形でさまざまな可能性を検討している最中です。無数な手段があり、正解や間違いはありません。
続けるかどうか、また、続け方の形は自分たちの意思次第だと思います。事業を続けるべきかどうか悩んだときは、小さな会社向けの戦略を明示したPaul Jarvisの著書『ステイ・スモール』で紹介されている方法が参考になるかもしれません。いまの時点でわかっていることをすべて知った上で、その事業をもう一度最初からやろうと思えるかを問いましょう。答えがイエスなら、続けるべきです。
ステップ3:自分や周りをケアをする
失敗を受け入れたあと、自分や周りをケアすることも大切です。失敗は、ユーザーやスタッフ、株主、投資家から「自分ならできるはず」「相手ならきっと大丈夫」という期待に応えられなかった状態ということです。
失敗したとき、あなたの態度は問われています。相手の期待に応えられなかった事実を受け止め、真摯に、誠実に相手とコミュニケーションをするべきです。でないと大事な信頼をきっと失ってしまいます。失敗はつらいことと述べてきましたが、周りの人と向き合い、正直に自分の失敗について話すことがもっとも難しいことかもしれません。そのためにもこの前のステップできちんと失敗の経緯や自分の感情と向き合っていることは役立ちます。
また、自分も失敗というプロセスで自分自身の期待を裏切っていること、そして傷ついていることを恥じないで欲しいと思います。繰り返しますが失敗を認めることは難しいプロセスなのです。こういった難しいときこそ自分のための時間を取りましょう。もちろん全てを置いて逃げ出すのではなく、周りの人への誠実な態度も大切です。その上で、がんばることと自分へのケアはセットで考えたいと私は思っています。
ステップ0:失敗する前に
Nestoでは経営状況を株主をはじめ、働く方やユーザーにも開示し続けてきました。悪いニュースは早めに言うべきだと、本当に思います。どうしても「次の施策がうまくいくかもしれない。次の施策が終わってから話そう」などと考えてしまい、報告を先送りにしてなかなか切り出しにくくなるものです。悪いニュースも細かく報告する癖をつけておきたいものです。

人生は無限ゲーム
哲学者のジェームズ・カースが提唱した「有限ゲームと無限ゲーム」という概念があります。
有限ゲームはルールがあり、勝利があるゲームです。たとえば、チェスやサッカーなどがそれに当たります。一方、無限ゲームは永遠にプレイするためにルールを変更し続けるゲームです。ビジネスや恋愛は無限ゲームの例です。うまくプレイすれば永遠に続くし、ゲームを続けるためにプレイをしています。
ひとつの有限ゲームの中では失敗をしたとしても、人生は無限ゲームです。そういった意味では人生において究極の失敗はあり得ませんし、ルールを変えながらプレイを続けていく必要があります。
失敗をゼロにはできなくても、私たちは失敗に対処する術を学ぶことはできるはずです。「A Taste of Design Matters」というイベントで私はこの失敗のプロセスについてお話しましたが、リアクションはとてもポジティブなものでした。失敗したときのマインドセットや失敗を生き抜くプロセスをもっと私たちは話していけるといいなと思いました。人の失敗の話を聞くと勇気づけられます。あなたの失敗についての話も教えてください。
写真提供: 本永創太

                            			
                        
                            			
                        
                                			
                            
                                			
                            

