デザイナーはAIとどのように関わればいい?AIとデザインが交わる3つ+αの方法

本記事は北欧のデザインメディア DeMagSign の翻訳記事です。
元記事はこちら:3+ Ways AI and Design Intersect — and Designers Can Get Involved With AI

Nadia Pietは、人工知能(AI)と機械学習(ML)、データの利用、デジタルカルチャーとクリエイティビティにフォーカスするフリーランスのデザイナー兼リサーチャーです。また、彼女はAIとデザインが交差するところで起こる現象を起こし、それを研究するマニアックなデザイナーやクリエイティブの専門家が集まるグローバルなコミュニティ、AIxDesignの創設者でもあります。彼女はDesign Matters 2021で「UX of AI(AIのUX)」というワークショップを開催しました。

この記事はそんなNadiaによるAIとデザインについての寄稿記事です。

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世界を形作る仕事

デザイナーの役割とは、自分たちが持つリソースを使って、明確な意図を持って世界を形作ることです。現在、この世界はよりデータセットやアルゴリズム、そしてあらかじめ設定されたモデルによって形作られるようになってきています。

人工知能と機械学習(以下AI/ML)はあらゆる業界、生活のあらゆる面に居場所を見つけるようになってきており、その進化はエンジニアの世界だけに止まらなくなっています。大部分の人がポジティブないしはネガティブな影響を受けるのですから、私たちはもはや「専門的過ぎる」からといってこれを敬遠することはできません。

テクノロジーの進歩を見て見ぬふりして、いまのデザインの方法論を続けることもできるかもしれません。しかし、デザイナーとして自分が持つ責任と影響力を自覚すれば、あるいは単に、AIとデザインが互いに及ぼす相乗効果に興味を持てば、自ずと道が開けるはずです。

AIとデザインはどのように交差するか

まだ黎明期ではありますが、AI/MLとデザインはそれ自体が独自の分野を築き始めています。大学はリサーチグループを作り、巨大IT企業は専門部隊を作っています。AI/MLの拡大があまりにも急速なので、デザイナーはこうしたシステムを「人間中心」であるようにするためのアプローチを急いで見つけ出さなければなりません。先日求人でも「AIデザイナー」や似たような職種の募集を見かけましたので、これはいま実際に起こっていることなのだと思います。

目下のところ、デザイナーがAI/MLを使って活躍できる機会は主に3つあると見ています。

1. AIと共にデザイン
 
(人と機械のコラボレーションによるクリエイティブなアウトプット)

2. AIのためのデザイン
 
(AIの開発プロセスに人間中心のデザイン手法を導入)

3. AI自体のデザイン
 
(AIにおけるインタラクションとUXデザイン)

それぞれについて詳しく見て行きましょう。

1. AIと共にデザイン

人と機械のコラボレーションによるクリエイティブなアウトプット。デザインツール、またはパートナーとしてのAI

クリエイティブなプロセス、デザインプロセスにおいてAIがどんなサポートをできるのでしょうか? AIとのデザインとは、クリエイティブなアウトプットを得るために、人間が持つクリエイティビティとコンピューターのロジックとのコラボレーションを模索するものです。クリエイターたちは、自分たちの画像やビデオ、テキスト、音楽、UI、プロダクトデザインなどの、コンピューターで処理できるデータに変換できるあらゆるフォーマットを強化するためのAIの可能性を探し始めています。

このアプローチは特に、グラフィックデザイナー、アーティストなどのクリエイターに関わりが深いようです。

AIと自然に融合しているデザインの例

デザインとAIについて学ぶためのリソース

デザインとAIについて検討すべき問題

  • AIについての議論を続ける中でどう「クリエイティビティ」を定義し、それを計測するためにはどうしたら良いか
  • 既存のデータセットとオープンソースのモデルからAIとコラボレーションして作られた作品の権利は誰に帰属するのか
  • ベストプラクティスを再現するためにコンピューターを使うべきか、あるいはランダムさを取り入れるためにコンピューターを使うべきなのか

2. AIのためのデザイン

AIの開発プロセスに、問題解決の手段として人間中心のデザイン手法を導入

私たちはなんのために、どのようなときに、そしてどのようにAIシステムを作るべきなのでしょうか? AIのためのデザインとは、AIの開発プロセスに人間中心のデザインのアプローチからその要素と専門家を持ち込むことです。機会を見つけ、ユーザーのニーズを考慮し、仕様の決定において社会への実装を念頭に置けば、思い描いた通りのシステムを作ることができるでしょう。そのためには、デザイナーとエンジニアによる、分野をまたぐ密接なコラボレーションが必要です。

このアプローチは特に、デザインコンサルタント、ストラテジスト、リサーチャーに関わりが深いようです。

AIのためのデザインの好事例

  • ユニークな方法で問題を解決するためにAI/MLための機会を捉える
  • ユーザーのニーズをデータ抽出と機械学習の問題として整理する
  • 用途による特定のアルゴリズムと最適化パラメーターの長所と短所を明らかにする
  • 「オズの魔法使い」メソッドを使ってユーザー体験のプロトタイプを作り、多くのリソースを投下する前にユーザーにとっての価値を見極める
  • 機能の選択と意思決定のロジックを早い段階で理解するために、その分野の専門家の話を聞く

AIのためのデザインについて学ぶためのリソース

  • AI meets Design toolkit:AIを扱うデザイナーのための私のツールキットです
  • AI Ideation Cards:AIの能力をよく知り、活用の機会を見つけるのに役立つ24のコツと100以上の具体例を集めたカードデッキです
  • Lingua Franca:人間中心のAIをデザインするための言語です

AIのためのデザインについて検討すべき問題

  • デザイナーはAI/MLに関してなにを学ぶべきか
  • エンジニアはデザインに関してなにを学ぶべきか
  • デザイナーとエンジニア、両方の仕事を最大化するにはどうしたら良いか
  • 人間中心のAIをデザインするにあたって、どのようなコミュニケーションとコラボレーションが必要か

3. AI自体のデザイン

UX、UI、AIシステムとのユーザーのインタラクションをデザインする。デザインの素材としてのAI

ユーザーは私たちが作ったAIシステムとどのように関わるのでしょうか? AIをデザインするとは、学習能力と知性を持ち、半自動的なシステムとのインタラクションをデザインするということです。どんなデザインの素材にも、特有の長所と短所があります。イベント用のポスターをデザインすることはモバイル・アプリのデザインとは違うように、AI/MLによって動くアプリケーションをデザインすることもモバイル・アプリのデザインとは違います。役に立つ体験、全体的な体験を作り出すために、デザイナーはデータとAI/MLの重要性を良く知った上で、スマートなソリューションを生み出さなければなりません。

このアプローチは特に、UI、UX、そしてインタラクションのデザイナーに関わりが深いようです。

AIのためのデザインの好事例

  • より良い体験のために、音声入力や画像認識等の新たなインタラクション を活用する
  • システムの動作について(必要な粒度の情報を入れて)ユーザーに説明で きるようなインターフェースをデザインする
  • 変えることに意味があるオンボーディングプロセスを並べる
  • 明示的、暗示的の両面でモデルの学習を助けるようなユーザーからのフィ ードバックを正しく得られる仕組を組み入れる
  • 網羅性とバイアスの観点からデータセットとモデルを監査する
  • 想定外の結果が得られる事態を考慮する

AIのデザインについて学ぶためのリソース

AI-Driven Design Ebook #4 — Design Challenges in Machine Learning Products:ユニークなデザインについての課題についての私のeブックです。

AIのデザインについて検討すべき問題

  • AI/MLのシステムをユーザーが理解するために役立つメンタルモデルとはなにか
  • 既存のピクセルベースのインターフェースの次のインターフェースに、説明可能性やユーザーからのフィードバックの循環といったハイレベルの原則を具体的に組み込むにはどうするか
  • 結果を予測し、インクルーシブであることを担保するために、開発プロセスの各ステップに責任と倫理による監視の目を組み込むにはどうすれば良いか

4. デザイン×AI

ユーザーは私たちが作ったAIシステムとどのように関わるのでしょうか? AIをデザインするとは、学習能力と知性を持ち、半自動的なシステムとのインタラクションをデザインするということです。AI/MLを巡ってはさまざまな手法とデザイン上の課題があります。これらは上の3つのカテゴリーには当てはまりませんが、やはり私たちデザイナーに関係することですので、これらについて触れないわけにはいきません。

データデザイン

周縁の領域では、AI/ML自体よりもその原料となるデータについてのアプローチが多いことに気が付きます。この中にはデータの可視化やデータデザイン、情報デザイン、さらにはデータベースのデザインも含まれます。たとえば、Giorgia Lupi氏の作品などはこの例です。

機械学習ツール

コードをほとんど使わないか、まったく使わないツールがマーケットに増えるにつれて、コードではなくGUIを使って機械学習の訓練をし、テストし、実装することができるようなアプリケーションをデザインする人も出てきました。たとえば、Teachable MachineやAutoIBM、RunwayMLなどです。

AIについての教育

プロだけでなく世間一般の人たちにとってもAI/MLが理解しやすくなるように、また彼らのデータリテラシーが向上するように、使いやすい教育用のコンテンツと体験を作り出すことがもっとも重要な仕事の1つです。

AI × デザインに関係するタクソノミーを作る

AIのためのデザインについて学ぶためのリソースとして紹介したAI Ideation Cards は、まだ生まれて間もないAI × デザインという分野で次々に生まれてきているさまざまな方法論を整理してある種のタクソノミーを作ろうとする、初めての試みです。全く完全なものではなく、むしろ皆さんにも考えてもらって追加してもらいたいのです。もっと多くの事例や新たなカテゴリー、また別のメンタルモデルなど、ぜひ意見を聞かせてください。

AI × デザインのコミュニティに参加する

AIとデザインの世界には一見して思うよりも多くの仕事があります。この領域での開発は影響力が大きいので、より多くのデザイナー、アーティスト、社会学者などさまざまな頭脳の持ち主が知恵を持ち寄り、エンジニアが作るシステムについて研究することが極めて重要です。

あなたもその一員です。なにかをしたいと思ったのなら、その声に従いましょう。資料の海に飛び込み、エンジニアの仕事に参加し、独特なAIのアートを作ってみましょう。なんであれ、一歩踏み出すことです。

もしAI × デザインの世界で働きたいのなら、私たちのAI × デザインの実践者のコミュニティにご招待します。私たちはイベントを主催したり、コンテンツを発表したり、Slackのチャネルに集まったり、機会を共有したり、ネットワーキングの場を作ったりしています。

やらなければならないことはたくさんあり、しかもまだ始まりに過ぎません。これから未知の領域に進み、そこに自分の力を注げることは誇らしいですし、ワクワクします。

なにか新しいことを学び、なにか新しい一歩を踏み出そうと考えているなら、ぜひ教えてください。

まとめ

AIとデザインの交差点には多くの新しい方法論が生まれてきています。いまのところ、それらは今回述べた3つのカテゴリーに分類できそうです。周縁の領域ではもっと多くの方法論が登場してきており、この若く、急成長している分野には、デザイナーがインパクトを残すためのワクワクするような機会が溢れています。

Written by Nadia Piet (AIxDesign)
Translation brought to you by Spectrum Tokyo

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Design Matters Tokyo

Design Matters Tokyoは北欧と日本をつなぐグローバルデザインカンファレンスです。次回は2023年6月に開催予定。

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